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バイト全落ちの彼が内定したので、きっと私は泣いてしまう

「この子の就活の面倒、見てやってよ」と紹介された彼は、バイトすら10社受けて全落ちするタイプだった。その理由は、履歴書を見てすぐにわかった。

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作成日:2020年07月31日  更新日:2020年10月22日

ざっくり言うと

  • 実力がある人でも、きれいごとを言うとバイトすら落ちる
  • バイトの履歴書を書き直したとき、人生の変わる音がした
  • 彼が内定式に出る日、きっと私は泣いてしまう

 

カフェに応募する彼の履歴書には、こんな風に書いてあった。

 

接客を通じて、お客様の笑顔が見たいです。

僕は人と話すのが好きで、アルバイトも接客をしたいと思っています。

カフェではたくさんの方を接客できるので、応募しました。

 

この履歴書も悪くないんだけど。

ただ、彼が応募していたのは一等地の人気カフェで。

このままじゃ落ちるかもな、という倍率ではありそうで。

 

「ねえ、これって本音?」

「え?」

「本当に接客が好きだからカフェへ応募するの? わざわざ表参道で? 地元の駅近じゃなくて?」

「あ、いや、そっすよね。でも志望動機ってバイトにそんな無くないですか。正直何も書くこと思いつかないっす」

 

その後、ムリヤリ聞き出した彼の本音はこうだった。

「地方の高校から進学して大学へ来た。ところが大学は都内とはいえ郊外のキャンパス。

思い描いていた青春☆は訪れそうにない。

だからせめてアルバイト先ではキラキラしたところがよくて、表参道のカフェを選んだ

表参道のカフェは雑誌で知っていて、あこがれている場所だった」

 

本音の志望動機で、初めてのバイト内定を手に入れた

「この本音を、入れればいいんだよ。志望動機」

「え、志望動機にそんなこと書いていいんですか」

「いいよいいよ、ただ、書き方をちょっと変えるだけで」

 

地方から来るお客様に最高の都会体験を届けたいです。

私は高校時代に最寄りのカフェまで自転車で30分という田舎に住んでいました。

当時の私にとってカフェは非日常で、特別な体験でした。

それから上京して、意外と都内にも郊外があること、非日常のカフェ体験をしたければ

やはり30分くらい電車に乗って、都心部へ出る必要があると気づきました。

そこで同じように地方からお越しになるお客様へ、最高の都会体験をお届けする支援がしたいです。

 

と、まあ、こんな風に彼のエピソードを聞き取りながら書き換えてみた。

「生々しいですね」

生々しいくらいがちょうどいいの。だって、そうじゃないと自分らしさが出ないし、嘘くさいし。

それにさ、表参道のカフェに来る人で、東京生まれ・東京育ちの割合どれくらいと思う?」

「まあ、低いっすよね」

「そう、だからさ、実はこのほうがリアルなんだよ」

 

果たして、彼はアルバイトに内定した。10社落ちた後で、初めてのバイト内定。

彼は、そこから少し変わった。

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たとえばモテたいから、カクテル作りのサークルに入る。

モテたいのはなんでだっけ。そう、高校時代にモテなかったんだよね。

モテてちやほやされてるクラスの男子が羨ましかった。

 

でも、なんで羨ましかったんだろ。別に彼女たくさんとかいらないし。

そうか、羨ましかったのは「同級生とか先輩からも一目置かれる感じ」だったんだ。

じゃあ、モテでもモテ以外でもいいけど、「一目置かれる感じ」ってどうやったら手に入るんだろう。

 

そうして彼は、大学2年生から筋トレを始めた。

さらに、ゆるい繋がりだった語学のクラスで飲み会の幹事をやってみた。

それから、内定できたバイト先のカフェで、ちょっと落ちこぼれた人を助けた。

 

そして、気づいたら。

彼は典型的な「就活で強いエピソードを持つ人」になっていたのである。

 

率直な志望動機で、難関企業の内定を手に入れた

彼は「自分の欲望」を素直に自覚する力を手に入れた。

だから、彼の志望動機は就活でもきれいごとがなかった。

 

これは、彼が書いたエントリーシート(ES)の一例だ。

 

私は「モテたい」欲望を叶えて顧客男性を幸せにしたい。

私は高校時代にモテなかったことから大学1年生のころはモテることばかりを考えていた。

表参道のカフェでアルバイトをしたり、ファッション誌をならって服を全部取り替えたりした。

 

だが、それで念願の告白をされても、全く嬉しくない自分がいた。

自分が欲しかったのは「男友達や先輩から承認されること」で、モテではなかったのだ。

それから私はやり方を変えた。飲み会の幹事をしたり、バイトでついていけない人を残業して助けた。

 

そうして人から認めてもらえて、初めてコンプレックスが消えていった。

御社のサービスは、モテたい男性をターゲットにしている。

だが、そのうち本当に「モテ」が目的な人は、どれくらいいるだろうか。

 

私は男性顧客の真の幸せを届けるために「モテたい」欲望をその根本にある承認欲求から解決したい。

そうして、同じ悩みに苦しむ男性の苦しみを減らしていきたいと思い、貴社を第一志望としている。

 

めちゃくちゃ率直だ。そして、嘘くさくない。

だから彼のエントリーシートはほぼ全部通った。

面接でもこのまま話したから、きちんと内定した。

 

内定先は、倍率100倍を超えるメンズ向け媒体の大手企業だった。

 

10月の内定式が来たら、きっと私も泣いてしまう

彼はあっけらかんと笑っていた。

「なんか、モテたいと思って表参道でバイトしてたら内定できたんすよ」と、言っている。

 

でも、私は彼のささやかな情熱が救ってきた人の数を知っている。

 

バイトでもう辞めようかと悩んでいた後輩が、その後1年働けたこと。

離散しかけたゼミが、彼のおかげでまとまったこと。

だから、私は10月の内定式に、こっそり泣くだろう。

 

就活の志望動機は「モテたい」「見返したい」「楽したい」でもいいのだ。

その小さな欲望が、たくさんの人を救っていくのだから。

 

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この記事を書いた人
投稿者

トイアンナ

就活ライター 。大学を卒業後、外資系メーカーのマーケティングを約4年経験。その後、ライターとして独立。書籍『確実内定』など多数。